第10回ものづくり日本大賞の受賞者紹介冊子公開
このほど公開されました第10回ものづくり日本大賞の受賞者紹介冊子(28、29ページ)の内容を転載いたします。
経済産業大臣賞
受賞者
馬場 将人(住友電気工業株式会社)
中島 徹也(住友電気工業株式会社)
江場 宏美(学校法人五島育英会東京都市大学)
津川 直樹(株式会社ナード研究所)
宮木 秀幸(株式会社Ring)
髙島 晶(不易糊工業株式会社)
下澤 喜彦(竹田印刷株式会社)
受賞件名
ものづくりのGXに貢献するCO2アップサイクル素材「metacol™ 」
常温でエネルギー不要の製造プロセス確立
CO2削減でカーボンニュートラル実現を後押し
受賞理由
1 常温常圧で鉄と二酸化炭素を反応させて炭酸鉄を作る技術を開発
2 副産物を活用し、安心・簡便・低コストでCO2の回収が可能
受賞者メッセージ
幼少期に地球温暖化を知って以来、30年以上その解決策を探してきました。CO2を簡便に
セラミックスに換えられる先行研究に着目し、不足する要素は他社との連携で補うことで、
CO2が削減できるものづくりを実証しました。大阪・関西万博における大反響や本受賞に示
された社会からの期待に応えるべく、挑戦を続けます。
ー20年前に報告されたアップサイクル技術を実用化
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への取組は本格化し、二酸化炭素(CO2)排出削減が急がれる。〝切り札〟と期待されるのが、受賞者らが開発・量産化(工業生産)に成功したCO2アップサイクル技術「metacol™(以下、メタコル)」だ。開発のきっかけとなったのは、2021年3月に住友電気工業で新たな事業展開検討のために開かれたワークショップで、金属やCO2、熱などの製品の副生物を活用し、カーボンニュートラルなどの社会課題や資源循環への貢献を目指すアイデアが出されたことだった。メタコルの主産物である炭酸鉄(FeCO3)は、東京都市大学の江場宏美教授が約20年前に研究に取り組んでいた。しかし、生成条件などが厳しく実用化には至っていなかった。受賞者らは先行技術調査の中で江場教授の研究にたどり着くが、炭酸鉄の産業利用は「あまりに的を射て、当初は疑心暗鬼だった」とアドバンストマテリアル研究所機能材料研究部の馬場将人主席は当時を振り返る。
ー役目終えた材料に新たな命吹き込む
江場教授とコンタクトを取り、江場教授は炭酸鉄の反応原理を、受賞者らはスケールアップ製造や用途開拓、材料供給など事業面を担当し、共同研究が始まった。常温でエネルギーや水素も不要という製造プロセスを確立、必要な物質も鉄とCO2、水だけとシンプルで環境負荷の低い製造プロセスを開発。製品の副生物である未利用鉄などを用い、固定化装置によってCO2を回収・固体化した。これにより材料を新たに調達しなくて済む上、既存の製造現場にも後付けできる。まさに「役目が終わったものに命を吹き込み、もう一度頑張って仕事をしてもらおう」(馬場主席)というわけだ。
ー製造業全体で技術育て、社会課題解決加速化狙う
同社が高純度のメタコル微粒子を多く供給することでCO2が削減され、各メーカーはプラスチックや紙などに配合して製品化することができる。メタコル微粒子を活用した製品は、2025年大阪・関西万博でも販売するなど、国内だけではなく世界への情報発信も進める。また鉄だけではなく他の金属に応用できる可能性も秘める。その上で、「一部の専門家だけではなく、市民レベルに浸透させることが重要」(馬場主席)と捉える。実現できれば、CO2削減の道は一層進むこととなるだろう。同社はこの量産化技術を独占的に扱うのではなく、他社との連携も視野に入れ社会課題解決を加速させたい考えだ。また純国産技術であることも重要で、製造業全体で育て、環境ニーズの高い海外でも使われる技術・産業が実現した際には、ものづくりGX(グリーン・トランスフォーメーション)が確立し、我が国の利益に還元できる。
ー審査員の視点 ゼロエネルギーでCO2回収が可能に
高温高圧でCO2を回収する方法は従来から存在するが、ゼロエネルギーで回収を可能にした点を評価。GXへの取組が本格化する中、CO2削減の課題解決に正面から取り組んでいる。
出展 https://www.monodzukuri.meti.go.jp/prizewinner/10/index.html